「刺青」 「少年」 谷崎潤一郎 著

「刺青」も高校時代の国語教師菊地先生が読書会で取り上げた本である。そう思って、この本を読んだら、私の思い出にあるようなセリフは一切書かれていないことを発見した。だから、私の記憶は別の本(「春琴抄」)なのかもしれないと思うようになる。ただ、どちらにしても、このような本を高校生に読み聞かせる先生は変わった先生だったのだ。(だから強い印象を残されているのだが)

「刺青」は短編小説で、腕の良い刺青師の主人公清吉は、いつの日か理想の女性の肌(光輝ある美女の肌)に刺青を彫ることであった。あるとき駕籠の簾から、真っ白な女の素足が見える。これが理想と思って、追いかけたが見失う。
その後、馴染みの芸妓の使いの子が、探し求めていた女性と気が付く。

その娘に清吉は秘蔵の絵(古の暴君の寵姫が生け贄の男を見ている絵とか、桜の幹に身を寄せて、足下に累々と斃れていく多くの男の骸を誇りと喜びをもって見ている絵)を見せる。
そして、この絵の女がお前だと言って、女は厭がるのだが、ついに自分もそのような性分を持っていると言う。

その後、麻酔薬を使って女を眠らせ、巨大な女郎蜘蛛の刺青を彫る。

女はこの刺青を見て、「自分はもう今までのような臆病な心を捨てた」と述べる。そして清吉に向かって、「お前は真っ先に私の肥やしになった」と述べる。

まあ、異常な世界を書いた小説である。だけど谷崎の世界は面白い。

「少年」は、同じ本に入っていた短編である。「刺青」が短いから、ついでに読んだわけだ。「刺青」にしろ「少年」にしても、どんどん先へ先へと読みたいという思いが湧いてくる筆力であり、さすがと思う。

主人公・栄ちゃんの少年時代を20年後に振り返るような小説である。主人公の少年は、学校では弱虫、泣き虫とされていたおとなしい良家の少年と友達になり、そこの家に出向く。そこには妾の子という娘もいた。
良家の少年と遊ぶ内に、そこに学校ではいじめっ子である逞しい子もおり、その子はこの家では、良家の少年に虐められている。
そして、この良家の少年は妾の子という娘も虐めている。その内、主人公の少年も嗜虐に喜びを受けるようになる。

ある時、ここの娘が秘密の部屋を見せるという。主人公の少年と学校ではいじめっ子の少年が娘を虐め、脅かして、その部屋を見せてもらうことにしたのだ。
そこで、今度は2人とも逆に娘から虐められ、それに喜びを見出すようになる。その内、良家の少年も同じように娘の奴隷になるというような倒錯した小説である。

谷崎潤一郎はちょっと前に「細雪」を読んで面白かったが、谷崎の原点になる性格が出ているような小説と感じる。いずれにしても谷崎は、大した小説家だと思う。


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