「晩秋の陰画」 山本一力 著

著者は江戸の市井を舞台にした時代小説が多く、それらは面白いものが多い。この本は、題材を現代にとった小説が4編おさめられている。その小説も謎めいた題材を選んでいて、興味深い。その4編は「晩秋の陰画(ネガフィルム)」「秒読み」「冒険者たち」「内なる響き」である。

「晩秋の陰画」は書籍の装幀デザイナーの主人公のところに、彼が師事した叔父の日記が届く。叔父も有名な装幀デザイナーだったのだが、引退をして、この主人公に仕事を譲る。独身でオートバイが好きで、一人で気ままに旅に出たりしていた。ある日、事故か自殺かわからないような形で死ぬ。その後、甥である主人公の元に叔父の日記が届く。ちょうど事故で亡くなった日で終わっている日記である。
その日記のある時期-ある女性を廻って叔父の親しい友人と間の問題が出てきたころ-の日記が、実は叔父と、その友人の立場が逆にしたような記述になっていることに気が付く。これが表題の「陰画(ネガフィルム)」なのだ。
最期に、叔父はそのようにすることで、叔父の無二の親友との仲を大事にしていたことがわかるというストーリーである。凝り過ぎなストーリーでもある。

「秒読み」とはある不思議な出来事で、人の死期がわかるようになった男の話である。話は奇想天外なのだが、それなりに面白い。魅力的なキャラクターが登場して不思議な物語に引き込まれていく。

「冒険者たち」とはフランス映画の同名の映画に感銘を受けた親子が、同じくその映画に影響を受けた人生を送り、その映画を愛する友人たちとの交流を織りなしていく物語であり、印象的な物語である。どこかのエッセイで山本一力が、この映画が好きなことを書いていたのを思い出した。著者の好きな映画を縦糸に、展開していく。

「内なる響き」は音楽評論の雑誌を創業した男と、その男が発掘した音楽が本当にわかるライターの物語である。そこにやはり予言者の占い結果を織り込んでストーリーを展開させていく。
このライターの影響力は大きく、これで雑誌が売れる。しかし歳を経て、そのライターが耳が悪くなる。それをアメリカで手術していくが、多額の費用がかかる。その内、創業者の死期も近くなる。そのライターに後を託そうとするが、ライターも創業者の死期にあわせて耳の手術を断念する。
音楽の機材に関する専門的な話がちりばめられていて、音楽が好きな人が読むとまた違った面白さを感じるのかもしれない。
「秒読み」と「内なる響き」には当たる占いが登場してストーリーを引っ張っていくが、興味深い反面、安易な感じもする。

著者の趣味・経験を活かして書いており、それなりに深みがあるとも評しておきたい。



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