「もう一つの「幕末史」」 半藤一利 著

はじめは、現在の薩長史観の歴史を正すというような感じで入ったが、最後の方は司馬遼太郎が「龍馬がいく」で取り上げた坂本龍馬、それから「峠」で取り上げた河井継之助に関する論を述べていて、著者の言わんとするところがわかりにくい点がある。「あとがき」に色々なところで書いたり、書き溜めていたものを編集したようなことを書いているから、そのような編集の結果として、論旨が一貫していないのかもしれない。
だからと言って、面白くないわけではなく、なかなか興味深いところがある本である。

坂本龍馬のことについては、同時代における色々な人物が龍馬に対して述べた論評を紹介しながら、坂本龍馬のの人となりをあぶり出していて面白い。著者は龍馬暗殺の黒幕に薩摩がいると思って書いている。私は相川司氏の論の方が正しく、法を破った(役人を傷つけた)為に追っていたと思うのだが。龍馬は優れて、魅力的な人物だったことがわかる。

また河井継之助の話も面白い。当時の藩主の引き立てで家老的な立場になったこと。その過程で門閥との軋轢が多かったこと。陽明学を奉じた自信家で自分の意見、考え方に固執した為に、悲劇的な結末を迎えたとの説も紹介している。説得力があり、司馬遼太郎の小説よりは、こちらの方が正しいと感じる。私は司馬遼太郎の小説の中では「峠」は好きな作品であるが、それは小説なのだろう。いずれにしても一人の英傑である。

はじめの方に書いてある「薩長史観を正す」という視点では次のようなことが書かれている。
当初の薩長方のスローガンの「尊皇攘夷」について、薩摩の革命軍の上層部は倒幕の口実と言っていた話を紹介している。
維新という言葉も、明治初期には「御一新」という言葉だったことが書かれている。
また当時は幕府側の阿部正弘、堀田正睦の方が開明的だったことを紹介している。
日清戦争が終わった直後の明治30年の陸軍大将は、全員が薩長出身者。海軍は薩摩出身。陸軍中将は長州12人、薩摩13人、土佐2人、福岡4人、東京1人という状況だったようだ。
なお、著者は勝海舟を高く評価している。確かに偉い人だと思う。江戸城攻撃の前にイギリス公使とも勝は会談していることを紹介している。

「あとがき」に時代が変化した時に、必要な人材が生まれてくる。すなわち人材登用の仕組み、心構えが大事と書いている。その点、現在は大丈夫かと疑問を呈している。
そして、幕末に尊皇攘夷がいつのまにか尊皇倒幕になり、そして維新が成立後は開国、西洋に学べとなった日本史を踏まえて、リアリズムの大切を説いている。長州は下関の四カ国艦隊からの砲撃、薩摩も薩英戦争として、外国と実際に戦っているのである。


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