「逃亡」 吉村昭 著

吉村昭の小説の一つのジャンルに逃亡者を描き、その心理、状況を迫真の筆致で描くことがある。この小説も、その一つで戦時中、霞ヶ浦航空隊所属の整備兵(当時19歳)が、ひょんなことから謎の男に助けられ、その縁から落下傘を盗み出すとかの犯罪を行い、最後には軍用機破壊ということをしてしまう。真相はわからないが、謎の男は連合軍、あるいは共産党系のスパイのようだ。
この男の犯罪(落下傘の盗み)はバレて捕らえられ、糾問をされる。その中で軍用機破壊のことも追究されるが、その途中に逃亡する。逃亡はうまくいき、最後は北海道の飯場で働いるところで終戦となる。その後、アメリカ軍の仕事をし、その後は過去を捨てて、青果店の主として働く。

このような物語だが、このことを吉村昭が知ったきっかけが冒頭にある。吉村のところにある人物から、この男のことで連絡が入る。そこで吉村が会いに行くと、この主人公の男は非常に驚く。過去を一切封印して生きてきたからである。
逡巡の後に、吉村に上記の経緯や逃避行を語る。そして吉村に語る内に、この男も過去の自分を探しはじめる。

ちなみに、吉村に、この男のことを連絡した人物とは連絡が取れなくなり、犯罪を犯した男も、この男のことは誰か思い浮かばないと言う。

逃亡者の心理が痛いほどわかるように書かれていて、印象的な物語である。そして、当時の軍隊生活、そして、ある意味ではもっと厳しい飯場の生活なども書かれていて、読む人に当時の世相への批判的な気持ちをおこさせるものだ。


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