「人生の観察」 吉村昭 著

吉村昭のエッセイである。新書で一つのテーマで2~3頁程度で書いているから読みやすい。もちろん吉村昭の文才もあずかってのことである。私は吉村昭の小説は好きだが、興味深いエッセイも多い。世相に対する著者の主張、昔の良き思い出、ちょっと良い話、旅行での話、酒の話、著者のエッセイに多い若い時の肺結核の話、著者が気になる言葉たとえば「不徳のいたすところ」「あいよツ」などについて記している。ちなみに上記言葉を著者は好きな言葉ではないと書いている。

作家のハガキ、手紙などの私信を売りに出すような風潮に批判的である。また趣味ぐらいは理屈をつけないで楽しめば良いとか、「偽」という字から、「人の為に」というように仕事をするのは偽りの行為という菩提寺の僧侶の話を引用して、政治家の「○○の為に」という言葉の偽善性を書いている
今、全国各地が観光地化を目指しているが、そのような全国を卑俗な遊園地化することが、新たな自然破壊につながるのではと警告している。

著者の小説での取材の中での思い出話・こぼれ話も興味深いものがある。具体的には「逃亡」(謎の男にそそのかされて軍用機を破壊し、逃亡を続けた男の小説)、沖縄戦を書いた小説、「高熱隧道」、「破獄」(脱獄名人の話)、「桜田門外の変」(これは取材中の話ではなく、書いた後に襲撃者の子孫の方と出会う)、「漂流」(八丈島の石垣について)、「光る壁」(内視鏡開発物語)、「深海の使者」(潜水艦の話)などである。まだ未読のものもあり、今度、読んでみたい。

著者は若い時の肺結核の手術時における痛さは何度も書いているが、この時に「時間は確実に流れる」との声で堪えられたこと、また肺結核で死のうと思った時があり、睡眠薬を用意したが、その時に読んだ倉田百三の一節に「自ら命を絶つ者は弱者であり、つらくとも生き抜く者は強者である」があって、止めたことが書いてあるが、はじめて知った話である。



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