「江戸のダンディズム」展 於根津美術館

根津美術館は来館者に和装の女性も多く、華やかだ。表参道から歩く道沿いも個性的な衣料品店などが軒を連ね、道に止まっている自転車も格好がいい。上野とは違う感じである。
展示室の中には、若い女性、若い男性、外国人もいて、従来の刀剣関係の客層とは違うと感じるが、最近の刀剣展は、こんな感じでもある。

展示の刀剣類は、脇差が多く、そうなると自然と新刀となり、加えて彫り身のものが多かった。新刀は、私などは刀屋さんでも名品を見ることがあり、正直なところ、驚きは感じない。(太刀拵の展示スペースに中身の刀身ということか長光の重美の太刀が古刀で一振)

刀身彫りでは、改めて一竿子忠綱の彫りの艶やかさに感心した。この華やかな彫りは、他の刀身彫りとは一格違う感じである。他作の彫りは刀身に彫ったという当たり前の感じだが、一竿子は彫りそのものが存在感を示し、さすがに彫りの一竿子である。
また、彫りでは、長門の藤原清重(寛文七年紀)と、筑前の信国(正徳四年紀)の彫りがよく似ているという印象を持つ。普段は観ない刀鍛冶だが、長門と筑前は近い。何となく共通するものがあるのだろうかと感じながら拝観する。

刀身の出来では伊賀守金道の平造り寸延び脇差が目に付いた。東山美平も出品されていた。江戸時代の評価は高い鍛冶だが、これまで、あまり良いものを拝見してこなかったが、江戸期は水田国重もそうだが、一般的に相州伝が評価されたのだと思う。
城州埋忠作(天正十八年紀)の短刀は、姿が良いもので、なるほどと思う。

ただし、展示のタイトルのダンディズムと、陳列された刀剣との関係はよくわからない。ダンディ=おしゃれと言う意味で刀身彫りなのか?しかし、総べての陳列品に刀身彫りがあるわけではない。

拵は、糸巻太刀拵と、鞘塗りが華やかな拵が展示されていた。金工の技に蒔絵師の技だ。江戸時代というよりも明治になっての輸出品のような感じもする蒔絵の技術の粋を集めたものが多い。ダンディズム=派手、華麗という感じだ。本来のダンディは、洗練、清潔なおしゃれだと思うのだが。私の感性の方が悪いのかもしれないが。
これらの展示の中では、私は鮫皮を研ぎ出した短刀拵が一番好きだ。このような観た目が派手な拵には強さを感じない。自分が所持している肥後信長拵の写しの方がよほど武士としてはダンディだと思う。しかし、このような感想では、今回の企画を考えた美術館関係者はガッカリするだろうか。

刀装具は信家が1枚あったが、きらびやかな刀装具の中では異質な感じであった。こういう点もダンディズムに違和感を感じるところである。金工の細工を拡大鏡を使って見せる展示は観やすいが、2つほどであり、もう少し、多くした方がいいと思うが、これだと鐔などの全体の造形がわからなくなるからだろうか。
金工は特に驚くものはない。と言っても長常の虎の子渡しの小柄や、昆寛の猿の縁頭、夏雄の牡丹に蝶の鐔など名品ばかりだ。名工は、その格に応じて「なるほど」だし、そうでない金工も、その作者なりの健全な作品だという意味で驚かないと言っている。

鞘の塗りは「木胎塗」と表示がある。漆の研ぎ出し鞘の塗りを、正式には、このように呼ぶのだろうか。

この展示室には、他に印籠がたくさん並んでいた。同時開催の他の展示の中では古代中国の青銅器は凄いと思う。殷の人民はどんな人間だったのだろうとの驚きを持つ。中国に戻れば大国宝級ではなかろうか。

1時半から、地下の講堂で伊藤満氏のスライドレクチャーを聴く。来ていた人は女性が多い。
ヨーロッパ、中国の美術はリアリズム、整然たる美が基調、アフリカの美術はアブストラクト(抽象、強調したいところを強調する)。日本はリアリズムだけでなく、室町期から石庭の抽象性、茶室の踏み石の変化、リズム感を持った配置、織部焼などの歪みの美を発見していたと説明される。
刀装具でも石黒一派の高彫りの鷹図のリアリズム、一方で志水仁兵衛の真鍮据え紋で強烈な鷹を表現するなど、リアリズム的金工作品と、同図でアブストラクト的な金工作品を対比させながら説明される。1枚だけ異質な展示の信家は、華麗な金工作品と対比させるために陳列してあったのかもしれない。
かように日本は昔からアブストラクトにも通ずる美を愛でてきた。ヨーロッパではピカソなどがアブストラクトの美を発見した。近代というのはリアリズムにもアブストラクトにも美を見いだす時代、日本はそれを先取りしていたところもあると言うような幅広い視点から刀装具の美を評価する興味深い講演であった。

質問では、日本刀の良さの見つけ方…手に取って、まず姿を見て、それから光源に向けて刃文を鑑賞したり、おだやかな光の中で地鉄を鑑賞をしたことの無い人にとっては、わからんのだろう。講師が展示の中で、良い刀ばかりでなく、悪い刀・下手な刀も併せて展示すれば、少しはわかるかもしれないというのも、一理ある。また刀屋さんに出向けば、手に取って見せてくれますとのアドバイスも、その通りだ。昔はデパートに刀剣コーナーがあり、そこは敷居も低く、店員も若く、私も最初は、そこで学んだ。刀屋さんは努力して欲しい。

また魚子打ちのような金工技術についての質問が出ていた。昔の魚子職人は、打ち出したら全部を打ち終わらないとトイレにも行けないと述べられていたが、最近は金工を志す人、それも女性が多いとも聞いている。刀装具の技術を活かして、刀装具とは別の実用的なものを造って欲しい。


ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 2

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック