「鬼灯-摂津守の叛乱-司馬遼太郎全集39」 司馬遼太郎 著

「空海の風景」と一緒に司馬遼太郎全集39に採録されている「鬼灯(ほおづき)」を読む。荒木村重のことを戯曲にした台本だ。司馬遼太郎の戯曲は「花の館」とこれだけだけだと思う。荒木村重は摂津の国の守護職を織田信長の元で任された武将で、配下に高山右近、中川瀬兵衛清秀などがいた。明智光秀に先立って、信長に謀反を起こし、その際に、籠城している城を抜け出し、城にいる女性、子供なども含めた家臣を見殺しにした人物である。加えて、自害もせずに、生き延び、最後は茶人として秀吉のお伽衆になったとされている。

いわば人間として、武士として、どうしようもない男だが、ある意味、どうして、このような恥さらしをして生き延びたのかと興味がつのる。司馬遼太郎も、そのような興味から取り上げたのではなかろうか。しかし、この戯曲を読んでも、当時の荒木村重の心理などはわからないというか、よく書けてはいないと思う。つまらない男をつまらなく書いているだけのように思える。
竹阿弥という、狂言廻し的な下僕、あるいは村重の理解者側だが傍観者的な下僕の存在は面白いが、それだけだ。
演劇としては文学座で昭和50年11月に初演があったそうだが、評判はどうだったのであろうか。あまり評判にはならなかったと思う。

キリシタンを信じる側女や、高山右近(忍んで来て降伏を勧めたと芝居では書いている)などの登場人物(オルガンチノも出てくる)からキリシタン的な考察もあるかと思ったが、別にそんなこともない。

なお、この小説とは離れるが、織田信長の末期には松永久秀が天正5年(1577)叛乱し、この荒木村重が天正6年(1578)に謀反をし、そして明智光秀が天正10年(1582)に本能寺の変と、部下も味方も、みんな信長には嫌になっていたのだと思う。



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