「これからの鐔収集」 小窪健一 著

刀屋さんで古書を購入したが、それとは別に「この本に三平さんが御持ちの鐔が出てますよ」とのことでいただく。昭和47年の本である。小窪氏が尾張の名鐔花弁透かし鐔を入手した時の話や、収集家の逸話(一つはS氏と書いてあるが笹野大行氏のことと思われる)などもあり、興味深い。
全体の基調は、まだ埋もれている鐔、鐔作家、鐔流派があるから、高名なもの=価格が高いものでなくとも、いいものはあるから、欲を離れて楽しみましょうというトーンでまとめられている。当時ブームとなった刀剣界の世相を反映したものだ。
鐔と言っても、鐔工の作品が中心で、金工の鐔は所載されていない。

「古美術収集と鐔」の章に、江戸時代の『阿州奇事雑語』の所載されている鐔掘り出しの話が紹介されていて面白い。原文が掲載されているが、私なりに意訳して紹介する。
細川家の鉄砲足軽2人が御用の飛脚の旅の途中で、遠州見付の古物商で鐔を観る。この一人がなかなかの目利きで、ある鐔を500文で買う。道中、愛玩しながら浜松まで来て休んでいると、京都から江戸へ帰る道具屋が来て、この鐔を観る。道具屋は50両で買うと言う。50両という大金はありがたいが、今の暮らしを続けるのには必要はない。一方、あの古物商の店のもの総べてを集めても10両にもならないだろう。自分が買わなければ、京都の道具屋が50両で買うわけで、それを自分が妨害したようだ、かわいそうだと考え、道具屋とともに6里を引き返し、道具屋から50両をこの店に渡させ、自分には500文を返してもらうようにする。店の主人は喜んで、恐悦して、半金は受け取って欲しいというが、足軽は受け取らない。これには道具屋も、この店の主人も感心して、さすがに御武家さんは心根は商人と違うと感心して、氏名、どこの御家中かと聞くが答えない。酒食も急の用事旅だからと受けない。
江戸で道具屋がこの鐔を愛好家の武家に見せて、件の話をすると、80両で買うと言う。買った武家は脇差に掛けて諸侯の集まりに出て、ちょうど居合わせた細川侯に、件のいきさつを話して「細川様は良い御家来を御持ちで、優れた御家風で羨ましい」と褒める。喜んだ細川侯はこの足軽の名前を調べさせ、江戸に召して百石の知行を与え、同伴の足軽は歩士に取り立てた」というものだ。

この書に書かれている「鐔収集十訓」は次の通り。私は総べてには共感しないが、参考になる。
「①名品は縁がなければ手にいらぬ」(この通りだ)、「②高名品の落とし穴」、「③真剣勝負が眼識を向上させる」(証書、先輩の言に頼らず、自分の眼で勝負しろ。偽物を掴んでも勉強になる)、「④古拙な味の時代鐔に目をつけよう」(小窪氏は古美濃の先駆者だ)、「⑤地方鐔工の作に上手あり」、「⑥大鐔は鑑賞用、小鐔は愛玩用」、「⑦名作といわれる鐔は構図が良い」、「⑧肉取りの妙」、「⑨個性を持った鐔に魅力あり」、「⑩最後は鉄味のよしあし」(⑦、⑧、⑨、⑩は、そもそも名鐔の条件だ) 

「主な鐔の見どころ早わかり」に各流派の特色が記されているが、ここに昨今、証書で極められる「古刀匠」「古甲冑師」(古の字は昔は付かない、江戸時代の刀匠鐔、甲冑師鐔などは明珍派、早乙女派、春田派、長曽祢派、刀匠の余技作とわけられている)、「京金具師」はない。

最後に図柄で集めるという趣旨だと思うが、「竜十姿」として竜の図柄の鐔を十枚掲載している。一つの収集の考え方だと思う。


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