「刀と首取り」 鈴木眞哉 著

この本は、日本刀の現存するものは他の武器に比べて圧倒的に多い。その理由として、著者は、日本刀は実戦における戦闘に使われたというより、別の目的ーたとえば首取りーに使われたのではないかと考え、当時の戦闘方法、戦闘の実態を調べている本である。一理あると思う。

刀は、日本人の成人男性であれば、誰でも所持していた武器というか日用品でもあるし、一方では昔から神聖視されていたものであることを明らかにする。恩賞の証としても使われるようになり、これが「名物」である。

日本人はチャンバラのイメージから、日本刀で戦闘し、その集大成が戦争というイメージが強い。この幻想は太平洋戦争の時にもあり、白兵戦を最後まで重視した(欧米にも白兵主義はあり、それを明治陸軍は採用した面もあるが第一次大戦後に欧米は転換する)。

しかし、実戦では、日本だけでないが、戦闘は遠戦志向になり、弓、鉄砲などの飛び道具、次いで長槍などが主体となることを明らかにしている。

軍忠状は、戦での恩賞の元になるもので、そこにどのような傷を負ったかが記されている。
著者は南北朝時代から応仁の乱までのを調べ、負傷原因として矢疵または射疵が約87%であることを明らかにする。
そして戦国時代の応仁から寛永までの軍忠状でも、矢疵・射疵41%、鉄砲疵20%、鑓疵・突疵18%、石疵・礫疵10%と、刀疵・太刀疵が少ないことを明らかにする。鉄砲疵が登場してきた後の史料だけで集計すると鉄砲疵が44%くらいになる。

剣と鑓が戦えば鑓が勝つという事例も紹介する。そして、太平洋戦争の事例から、日本刀には刀身と柄が目釘一本で接合されていることから来る構造上の問題があることも述べられる。

そして当時の介者剣術(鎧を着ての剣術)と素肌剣術の違いから、刀で切り付けても切れないことを述べる。そして、戦国時代の功名のありかたの一つとして首を取ることがあり、その目的に使われたことが多いのではと結論づけている。


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