「讃歌-美に殉じた人々へ」 松永伍一 著

著者は文学、美術、民俗などの評論や詩を書いたり、また絵も画いているようだ。取り上げている画家は、青木繁、坂本繁二郎、関根正二、村山槐多、古賀春江、竹久夢二、佐伯祐三、永瀬義郎、田中恭吉、藤森静雄、長谷川利行、靉光、難波田史男、平野遼、齋藤慎一、篠原道生である。私は最後の篠原道生の絵は拝見したことがない。

著者が久留米出身の為か、久留米出身の画家も多い。青木繁、坂本繁二郎、古賀春江、藤森静雄がそうであり、ここでは取り上げていないが版画家の吉田博もそうだとのことだ。また詩人の北原白秋、作曲家の古賀政男も久留米だそうだ。興味深い。

その久留米出身者への評伝は、郷里への愛着が相俟ってか、心に染みるいいものだ。青木、坂本はともに久留米藩士の家系で、同じような時期に生まれている。青木は天才肌で情熱的な絵を画き、破天荒に生活をして夭折する。福田蘭堂(笛吹童子のテーマ曲の作曲家)が青木の子だとはじめて知る。今、ウィキペディアで調べたらクレージーキャッツの石橋エイタロウが、福田の子と知り、驚く。

坂本繁二郎への評伝は暖かい。坂本はパリに学ぶが、後には郷里に籠もり、独特の朦朧として絵を描いて、いいものだ。
また古賀春江の評伝もいい。あのようなシュールの作風が生まれた背景もわかる。
そういえばブリジストン美術館創設の石橋正二郎氏も久留米の出身だ。

これらの評伝も、発表された時期、雑誌も様々なようで、人物ごとに執筆のスタイルも違い、わかりにくい文章もある。わかりにくいとは、私がよく知らない画家ということもある。そのようなこともあり、絵に詳しくない人は面白くないだろう。図版も巻頭に各人の作品が1点掲載しているだけである。

関根正二についても、ここで新しいことも知る。関根の実家の屋根にオニユリが咲いていて、それが関根の好んだ朱色(バーミリオン)と同じなどというのは、本当かどうか知らないがゾクっとする。
村山槐多の評伝も彼の詩も織り込んで、独特の愛惜感がある文章で好きである。
竹久夢二の、ある意味、時の権威とかではなく、時代の底辺の人々の感傷に即したような画を評価しているのも共感する。
佐伯祐三の解釈もなるほどと思う。

靉光は、この評伝で好きになる。寡黙で骨太で、優しい面がよく書けている。
難波田史男についても、よくわかる。



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