「遊色」 澤地久枝 著

重たい本である。収録されているのは「遊色」「花の見えない季節」「背番号は「かなしみ」」「鎮魂の海へ」「父母の終焉」「菩提樹の花の下で」であるが、いずれも気分が重くなる文章である。
「遊色」は、著者へ来た女性からの手紙に答える形で、自身の恋愛事件を赤裸々に語っている。ここでは関係者は匿名にしたために背景なども省略されていてわかりにくい。ネットで調べると、当時、著者は編集者であり、学生時代に知り合った人物と結婚していた。その時、編集者と作家の関係から恋愛関係に入り、その時の悩み・傷着き(自分も相手も傷付ける)・煩悶・嫉妬などのどろどろした感情を辿っている。匿名の作家は有馬頼義とネットでは書かれている。その日記を読んだことから、彼の奥さんとの関係などに悩み、煩悶していく顛末を書いている。

「花の見えない季節」は著者が満州からの引き上げた後の終戦直後の家族の様子を書き、そこから自分のルーツ探しにも筆を進めている。
「背番号は「かなしみ」」も同様に著者のルーツ探しの文章である。先祖といっても祖父母などだが、楽はしてこなかった事情がこのような表題になっている。

「鎮魂の海へ」は著者が「滄海よ眠れ」でミッドウェイ海戦に参加した多くの兵士(アメリカの兵士も含めて)の事績を調査した結果、その海域で慰霊を行う船の旅に参加する。その遺族と同行して、交流する中での思いを綴っている。
ちなみに「滄海を眠れ」は私も読了したが、印象に残る良い本である。

「父母の終焉」は、著者が四国八十八箇所巡りのお遍路さんの旅に出る。同行した人はそれぞれの思いで遍路を続けるが、著者は父と母の最後の時を思い出して、それを文章にしている。

「菩提樹の花の下で」はアウシュビッツ収容所に著者が訪れた時の紀行記であるが、訪れた場所が場所であり、観光気分は一切出ずに、人類はどうして、こういうことまでやってしまうのかという思いが深く、重く漂う文章である。

ちなみに「遊色」とはオパールの不思議な色を言うようだ。


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