「国宝の刀ー伝えられた武士の心」 於永青文庫

今日、畏友のH氏と永青文庫に出向く。最上階に新しい展示室も出来、また刀剣の為の照明もLEDだと思うが、良くなって観やすい。もちろん展示においては、地鉄の地沸、地景などは手に取って拝見しないと無理だし、刃の細かい沸の粒の状況、働きも無理だ。また鋩子も観にくいです。
生駒光忠と古今伝授の豊後行平は新たに研ぎ直した結果が拝見できた。国宝などは16代目の細川護立氏が蒐集したものだ。

豊後行平は健全な太刀であり、古い刀にあるねっとりした地鉄だが、よく詰んでいる。古九州物にまま見る白けた鉄ではない。姿は特に先に行って伏すようなところもなく、長寸の良い太刀姿である。刃は細直刃だが、焼き落としがあり、そこから水影が立ち、それが刃縁にからんで元から先の方まで続く。H氏によると、湯走り状のもののようで、粟田口物になると、これが二重刃になるのではないかとのことだ。同じくH氏の談では沸が強い刃とのことだが、太刀の形で刃を下に展示してあり、それは見にくい。太刀の元の方の鎬に倶利伽羅だと思うが彫りがある。その彫りを観ても、研ぎ減りが少なく健全であることがわかる。
革包みの太刀拵が付いており、それは細川幽斎が古今伝授の御礼をした関ヶ原の当時のものである。

生駒光忠も健全な太刀で、大磨上げで金象嵌銘であるが、陽の姿・体配で豪壮である。差し込み研ぎで刃は明るく、染みたところもなく、見事である。刃の焼きは高く、見応えがある。元の方は丁字刃が華やかで、先の方が互の目刃が目立つ。地には比較的刃に近く映りがみられる。良い御刀だ。

少し離れたところから、拝見した方が姿もわかり、刃中の冴えも見えることに気が付いた。

重文の守家の太刀もあり、光忠と比較する意味で記しておく。こちらは少し磨上げで茎先に銘が残る。蛙子丁字の見本のような刃が元に連なり、光忠よりもこちらの方が更に焼きが高く、働きの多い丁字刃が連なり、見応えがある。刃が高いから地の部分は少ないが、鎬地を見ても肌立つところが見られる。これが、光忠と守家の違いとH氏に教わる。

なお、この太刀におけるハバキは金無垢で、上貝に麒麟の彫りがある。ハバキ・オタクのH氏は「これは徳乗の作との伝承がある」と熱心にご覧になる。こんなハバキの説明はH氏とご一緒でないと聴けない。

安国寺恵瓊所持の包丁正宗は、元の方から水影とも間違うような沸映りがくっきりと物打ち辺まで見える。刃は私の国広のように島刃があり、変化に富む。H氏に伺うと、この包丁正宗は地景、金筋は目立たたず、堀川物に近い方だとのことだ。宗珉の群馬の金具が付いた梨地合口拵がついているが、伊東巳代治が付けたようだ。

則重は、銘が深く堂々としている。ふくらが枯れた鋭い姿をして、沸出来で焼きの高い乱れ刃である。これは陳列時の刀身の傾け方を、今一つ手前にしていただけると、さらに刃中の変化が見やすいのではと思う。私より身長が高い人であればちょうど良いのかも知れないが。
蔦唐草蒔絵小さ刀拵は金をふんだんにつかった後藤一乗のもので、蒔絵も見事。

この他、金象嵌で「海賊」の銘がある志津の刀。のたれ調で、大切先のいかにも志津という御刀。
「兼光磨上 光徳(花押)」の兼光の刀。研ぎがかぶっている感じで地は見がたい。刃紋は高さのある肩落ちをさせないような互の目で逆がかるところもあるという調子である。もちろん南北朝の大磨上げ体配である。

長船家助、長船経家も、それらしい良い御刀。加州信長にも見事な黒漆刻鞘の良い拵が付いていた。漆の色艶が良い。

之定は、歌仙拵とともに展示。腰刃がある匂口の締まった明るい直刃である。地は詰んでいる。
歌仙拵はご存じのように腰刻みがある鮫鞘で、ふすべ革の柄巻きで味がある。
信長拵の模造と、信長拵を記録した巻物も出ていた。
兼元は尖り心のない三本杉の刃紋。銘は標本のようで見事。
大道直房入道の平造りの脇差は、締まった直刃で、欄間透かし彫が見事。

刀装具が、また凄い。又七が、重文の桜に破れ扇図鐔、重美の桜九曜紋透鐔、重美の霞桜文鐔に、左右波透かし九曜唐草紋鐔、十二瓢透鐔、鶴丸透鐔と、6枚も出ている。これらを拝見していると「自分のコレクションが貧相に見えて嫌になる」とH氏につぶやく。
スーパーフラットではない又七もあり、今度、伊藤満氏に色々と教えてもらおうと思う。

彦三の真っ黒な赤銅地を花弁のようにして九曜を透かし、真ん中をくさらかしで模様をつけた鐔。この黒さは、私の鉄地の彦三の透かし鐔に共通することに気が付く。

有名な重美の2代勘四郎の田毎の月の鐔。これは縁が土手耳みたいになり、切羽台の周りを円形に少し低く窪めていることに気が付く。正面からの写真ではわからない。

まだまだ名作の感想は続くから、楽寿の鐔の評はパスしたい。それだけ見応えのある展示が続くということだ。

重文の金家の毘沙門天の鐔に、同じく重文の春日野鐔も展示してあるではないか。春日野は至文堂の本の写真と違って、金家錆は目立たなくなって、良い鉄味になっている(そういう意味で金家錆が目立たないのは寂しいが)。金家は図取りの良さ、うるさくはない象嵌の良さ、鐔の形状の面白さに加えて、鉄味も見事なことに感嘆する。

加えて、重文の利寿の牟礼高松の鐔。今回は裏もわかるような展示で、裏の旗を持った兵士の彫りも見事なことに驚く。表の馬上の義経は堂々として見事。大したものだ。
利寿には重美の鉄地に牡丹獅子を象嵌した小柄も展示されている。名品の展示揃いで、重美の利寿でも影が薄くなるほどだ。

勘四郎の肥後の縁頭が9組、2代勘四郎が2組、これまた見事。肥後の本歌の縁における腰の低さを再認識し、象嵌の巧みさ、鉄味の良さ等に関して認識を新たにする。

後藤宗乗、顕乗、程乗、光寿等もいいものだが、コメントが長くなる。ここでは、赤銅の質の良さが後藤には決定的に大事だということだけを記しておく。

宗珉の獅子の金無垢目貫、振り向いて上を見上げる姿には迫力がある。他に宗珉には、象の目貫や、重美の群馬の小柄、二王の目貫の出品があるが、このコメントもパスだ。

東雨の茶杓筒の小柄。こんな地味なものでもさすがと思わせる安親はやはり凄いと思う。

眼福な一日だった。2時間近く拝観し、そこから江戸川橋の公園に出て、早稲田に出て、H氏と食事し、大隈講堂の前の喫茶店で3時間近く話す。








この記事へのコメント

清宮 純
2014年10月09日 14:53
 こんにちは、何回も読み直しております。やはり行って自分の眼で見る必要がありますね。そんな感じがいたします。

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