「菱田春草展」 於国立近代美術館

菱田春草は、日本画に洋風画の要素を取り入れ、研究した画家である。これは私が展覧会を観て言うまでもなく、広く知られていることである。私は、今度の展覧会を観て、それを追認して「なるほど」と感心しただけである。

まず、日本画の命の線を消すような工夫をした。簡単に言うと面で描いていくような感じである。それは朦朧体とも評されている。次に、面で描いて、なおかつクリアーにするためには色遣いを工夫した。それが「王昭君」の屏風だ。白色の衣服などが効果を高めている。この「王昭君」は女性の顔が王昭君以下、皆、同じように感じる。これは浮世絵、日本画の伝統だ。また、八頭身に描いているところも同様である。そうは言っても意欲作であることは感じる。

次に日本画の色を欧米風に近づけることを工夫する。点描みたいなことも「賢首菩薩」で実験している。解説に西洋の絵の具も使ったことが書いてあった。
そして、題は失念したが、セザンヌみたいな絵もあった。また「富士」は、いくつかの山並みの上に白い富士なのだが、前の山々の色が、それぞれに美しく、面白い作品で、好きな絵だ。

大観と春草が一緒に、例えば大観が「寒山」を描き、春草が「拾得」を描いて二流の御軸で一作というようなものがあったが、私如きには、同じ作者の手に見える。かように大観ともお互いに影響を与えあっていたことがわかる。

岡倉天心とともにアメリカに行ったわけだが、その時に現地で販売した絵などは、欧米人の趣向にも合う風景画で、木立ちの風景などを描いており、なるほどと思う。額に入った小品で、いいなぁと感じるものもあった。

「落葉」は屏風の余白も多く、木と落ち葉の組み合わせで、遠近感をだすような絵である。賞に入り、好評だったようで注文に応じて何枚も画いたようだ。なかに未完のものもあった。

そういう落葉の林の中に鹿を描いた軸がいくつかあったが、鹿が生き生きしていて好きだ。その鹿のかわりに、黒猫が、落ち葉の柿の木か柏の木かにいるのが「黒き猫」だ。黒一色で立体感を出し、その木の上の黒猫がこちらを見詰めるような構図は、何か作者からのメッセージを感じる。

私が例によって、いい絵に感銘する時の胸に何かが上がるような感を持った絵は「竹林」である。銀をバックにした屏風に墨で竹とその葉を描いたものだ。銀は今では少し黒ずんでいて、画いた時とは印象も違っているかもしれないが、金屏風では無い、銀屏風で、墨で画くという試みは新鮮である。

面白いのは剽軽な顔の「風神雷神」である。どなたかの好みなのであろうか。

国立近代美術館は常設展がいいが、今回は名作が4階のはじめにまとめて陳列されていた。私の大好きな関根正二の「三星」もここにある。岸田劉生の「切り通し」も凄いものだ。
常設展示では佐伯祐三の絵、2枚、藤田嗣治の絵も、戦争画も含めて多く展観されていた。佐伯の気迫と寂しさ、フジタの達者な筆遣い、凄いものだと思う。

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