映画「風立ちぬ」

映画は観ていないわけではないが、DVDやTVが多い。映画館に行くのはジプリなどに限られているの現状である。昨日、妻と宮崎アニメの新作に出向く。

優しい色合いの美しい風景、私などの世代ではまだ理解できる懐かしい景色を背景に、日本の戦前を舞台に夢に向かって歩んだ少年(最後には成長して大人になるが)の物語であり、またその人物の美しいラブストーリーが奏でられる。そして、そのラブストーリーに自然に目頭が熱くなる映画である。

画像における風の動き、機関車の煤煙の動きなどはダイナミックである。タイトルが「風立ちぬ」と風を意識させるからであろうか。また飛行機、戦前の機関車、一銭蒸気(船)などの乗り物も多く出てくる。

この映画は重くない。軽いというわけではないのだが、次のような点が不思議と重さを感じさせずに淡々と流れていく。

1.関東大震災に遭遇する。この災害はおぞましい災害だが、この映画では、それほどの悲惨さは伝わってこない。

2.恋には障害がつきものだが、主人公たちの恋に、反対者、邪魔するモノはいない。ただ暗雲として立ちはだかるのは結核という、当時の死の病である。

3.夢の実現の為には、本人の学問上の苦闘、研究上の煩悶もあるはずだが、天才技術者として、そんな苦労はない。課題をどんどん解決していく感じである。

4.夢を会社で実現するのは、大きな組織特有のしがらみ、人間関係があって、若い時は思うように活躍もできないのだが、入社早々から嘱望されて、失敗をしても暖かく見守ってくれる上司がいる。また、ともに励まし合って向上できる同僚もいる。海外(ドイツ)にも研究に行かされる恵まれた立場である。

5.この時代の最大の災禍は戦争で、ご承知のように負け戦であり、悲惨なものだが、そのような惨憺たる画面はほとんどでてこない。登場人物も戦争での悲劇を語らない。時たま、落ちた飛行機の残骸が、それらしい悲惨さを伝えているだけだ。

6.戦前は貧しい時代であったのだが、主人公も素封家の出身で、妹は医者の道に進むような豊かな家庭の出身である。勤めた先も三菱重工である。恋する相手も、軽井沢に避暑にくるようなお金持ちのお嬢さんである。住んでいる家も豪華である。

7.恋の舞台も避暑地の軽井沢のホテルである。

夢の実現も、恋の成就も、多くの障害を乗り越えた結果として得る方が、感動的なのであるが、宮崎駿は上記のように軽みをもって、物語を作っていく。物足りないと思う人もいるかもしれない。ちょっと不思議な感じであった。

いつもの作品と違って、リアリティの多い作品だ。スパイのゾルゲを思わせる人物も日本の将来を暗示させる役割、また恋のキューピッドとして登場する。私などの世代は理解できるが、若い人や、いつもの調子の宮崎アニメを期待する人はとまどうのではないかと思う。
いつもの宮崎ファンタジーは、主人公の夢(夢は良く出てくる)の中で、イタリアの航空機産業の立役者の伯爵と交流するところである。

吉村昭の小説で、私も知ったのだが、名古屋の三菱重工の工場から、各務原の飛行場までは、道が悪かったせいもあるが、本当に牛車で運んだそうである。日本は大変な戦争をしたものだと思う。

画像は美しいのだが、主人公の妹で、医者になった女性、こういう立場であるから、立派でしっかりした女性のはずだが、主人公の元を尋ね、妻である女性が結核の療養所に戻ったことを知った時に、泣くのだが、その泣き顔がトトロのメイちゃんの顔になったのには驚いた。

私の個人的印象は、宮崎俊の息子の吾郎の作品「コクリコ坂から」の方が共感する。



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