「無所属の時間で生きる」城山三郎著

これは城山三郎が、雑誌に同じタイトルで連載したものに加筆したものである。定年退職者向きのもののように思えるが、そうでもなく、組織に属さない作家などが持つ時間も無所属の時間としている。

この中で、入院生活も無所属の時間であるとして、大病をして入院となり、かえって人間性が磨かれた人物の例として、昔の国鉄総裁を務めた高木文雄、政治家では池田勇人、前尾繁三郎などをあげている。
そういえば松永安左エ門の言葉だと思うが、「人間、刑務所、大病、破産をしないと本物にならない」とあったのを思い出した。自分を見詰める時間は必要だと思う。

松永も城山も叙勲を嫌ったことで名高い(松永は、「あなたが受勲しなければ、この制度が崩壊する」と言われ、しぶしぶ勲章を受けている)。共通する心根を持っているのだろう。

また別の章に、商社は敗者復活の機能が働いていなければ商社ではないという三井物産中興の水上達三の言葉が載せられている。大病、破産ではないが、これも一つ、人間が大きくなるきっかけなのであろう。

戦争中に激戦の第一線を歩きながら、部下に慕われた砲兵中佐の渡辺康夫氏の事績を簡単に紹介し、「この日、この空、この私」を自分の座右の銘にしてきたことを書く。
このように著者が偉いと思った人物、立派だと思った人物の事績も、紹介されている。朝の十分間読書をはじめた林公(ひろし)氏のことも紹介されている。恩師である山田雄三教授の姿も大きく清々しい。また、著者が敬愛する無所属の時間に生きた人物として、梶井基次郎、荻須高徳の作品やエピソードも紹介している。

何かの大きな組織、権威に属して、モノを言うような人物は嫌いなのだと思う。自分なりに努力して、自分の考えに即して生きている人物が著者の好みなのであろう。

この中で、饗庭孝男、高橋和巳、川西政明、永井龍男、池澤夏樹、河盛好蔵、中野孝次、林勝太郎、伊藤肇、ジョン・クラカワー、結城昌治、田村隆一の本を紹介しているが、私はこの中の一人の著作しか読んでいない。何かの機会があれば読んでみたい。、

旅行も無所属の時間で生きることの一つのようで、これにも頁を割いている。

エッセイであり、今の時勢・風潮を嘆いている箇所もある。


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