「男の晩節」 小島英記 著

これは、いい本である。「晩節」とあるが、晩年だけでなく、取り上げた人物の全生涯をまとめている。
著者が取り上げた人物は、土光敏夫、本田宗一郎、松永安左エ門、小倉昌男、石橋湛山、山田次郎吉、伊庭貞剛、新渡戸稲造、富岡鉄斎、各務鎌吉、御木本幸吉、森信三、井上成美、山本夏彦、後藤新平、三宅雪嶺、大原孫三郎、古島一雄、鈴木大拙である。
それぞれの人物評の最初に、その人の写真が掲載されているのだが、その写真における各人の風貌が実に良い。「男は顔だ」ということがよくわかる。

私がよく知らなかった人物は伊庭貞剛(住友財閥の総帥)、各務鎌吉(東京海上保険の基盤を築く)、森信三(教育者)、三宅雪嶺(言論人)、古島一雄(ジャーナリストで犬養を助けた政治家)である。

取り上げられている人物は、名利に淡々として、世の中に意義あると信じた仕事を追求している人物である。若い時は、挫折もし、回り道もし、反骨で権威にすり寄ることはしない人物である。
本田宗一郎、松永安左エ門、小倉昌男などは官僚に対して正論を吐いた男である。伊庭貞剛も若い時は官界に失望して辞表を出している。彼らに限らず石橋湛山、三宅雪嶺、古島一雄、自由主義者が多いのも特筆される。新渡戸稲造、鈴木大拙は国際結婚である。

この本には色々な読み方があると思う。各人の挫折(受験の失敗、失職など)を見るのも面白いし、各人の出自を見るのも興味深い。あるいは影響を与えた母親、父親、祖父などを見るのも考えさせられる。また師とのめぐりあいの大切さも大事だと思う。
人生の師との出会いは奇跡のように大切なことである。これなどは運というか、天の配剤というか、そういうものを感じる。師の教えを受け入れるのは本人の謙虚さであり、そういう資質があった人々なのだとも思う。

ちなみに出自は次のようになっていて、比較的裕福な家、ただし、家業は落ち目になっている家の出身者も多い。名利に淡々というのは、没落していても、それなりの家というのが多いのかもしれないと思う。また武士だと先祖に勘定奉行というのもいる。あるいは祖父がやり手というものいる。医師もいる。遺伝的資質はあるのだと思う。

名主、庄屋に縁(中には起業をしている家もある):土光敏夫、松永安左エ門、山田次郎吉、大原孫三郎
小地主:各務鎌吉
祖父は金貸し:山本夏彦
商店:富岡鉄斎、御木本幸吉
議員:森信三
鍛冶屋:本田宗一郎
二代目:小倉昌男(父は青果商から運送会社をおこす)
僧侶:石橋湛山
武士:伊庭貞剛、新渡戸稲造、井上成美、後藤新平、古島一雄
医師:三宅雪嶺、鈴木大拙


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