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zoom RSS 「岩倉使節団という冒険」泉三郎 著

<<   作成日時 : 2017/08/27 18:00   >>

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岩倉使節団は壮挙だと私は思う。明治維新という政治革命後に、その首脳陣の過半が国を空けて欧米先進国の視察に出る。明治4年(1871)の暮れから、1873年の9月まで2年弱という期間の旅だ。
「百聞は一見に如かず」と言うが、政府首脳のこの旅で、より現実的なキャッチアップの道が生まれたのではなかろうか。

政治体制については、フランスやアメリカのような共和制よりも、ドイツやイギリスのような王室とリンクした民主制が日本にはふさわしいと認識する。そして大久保利通も、木戸孝允も憲法の内容に思いをはせている。今の日本人よりも真剣である。

外交・軍事に関しては、欧米諸国は万国公法とか口触りの良い言葉を言うが、弱肉強食が現実だと把握する。

産業については、欧米諸国といえども明治維新から40年前までは日本と同様な状況だったことを知り、そのくらいの期間をかければキャッチアップできるということを実感している。
それから、岩倉具視などは、各国とも自国の文化(演劇、音楽)を大事にしていることを認識して帰国している。

この随行員に記録係として任じられた久米邦武の見識も大したものだと改めて思う。この本は、久米の本をベースにして、同行した他の人物の日記、書簡、また出向かずに日本にいた当時の高官の資料などの一次資料や、これまでの研究者の著作からまとめており、巻末に参考文献が列挙してある。
出向いた国はアメリカ、イギリス、フランス、ベルギー、オランダ、ドイツ、ロシア、デンマーク、スウェーデン、イタリア、オーストリア、スイスにわたる。帰国の途中に航路上の中東、アフリカ、セイロン、シンガポール、香港、上海の実態も目に焼き付けて来ている。

岩倉具視は安政5年(1858)に、「神州万歳策」という建言書を出し、その中で通商条約の前に欧米諸国に調査使節団を派遣すべきと提案しているようだ。
明治4年時の使節団の献策は大隈重信と言われている。当時の政府顧問のフルベッキが企画書を作る。問題意識・使節団の目的として不平等条約改正の問題意識はあった。それと新国家の設計図をつくることだ。

大久保は西郷、木戸のような維新後の虚脱感は無く、新しい時代の建設に思いを馳せる。大久保の息子も同行している。木戸はビジョン・メーカーであり、松蔭の言葉や、西洋の猿真似ばかりでは心配との思いで参加したのか。

使節団は107人。アメリカではいたるところで大歓迎を受ける。風習の違いで驚いたと思う。ただ公家、武士だから姿勢、風儀は立派で、それなりに米国人に感銘を与えたことだと思う。
伊藤博文の演説など、堂々とした演説内容で大した人物だと思う。

アメリカ横断の旅で久米は車窓からインディアンをみかけて、文明、文明というがアメリカ人は結局先住民族の国を蹂躙した乱入者と感想を述べている。

久米はキリスト教に関して、教義を聞けば「処女懐胎」や「死囚の復活」など瘋癲(ふうてん)の戯れ言として思えないのだが、米国における信仰の篤さには感心せざるをえないとも書く。

また男が女にやたらに親切で、老人には冷淡と書く。大統領選挙は商人の売り出しのようだと違和感を持つ。

イギリスのウエストミンスターでは国君の威厳に立君の光をみる。ロンドンでは会社が自由盛んにて共和政治の態あり、郊外の野や村々を回れば、貴族豪姓の権利大にして貴顕政治の態をみるとイギリスの3つの側面に対する的確な感想を記している。

途中、余裕資金を預けていた銀行が破産するという事件に遭う。長州の南貞助が留学先のイギリスで銀行を経営する米人のブルース兄弟と知り合い、そのすすめで預けさせたようだ。使節の金庫番の田中光顕は受け付けなかったが、個人の金をだいぶやられた。
また当時、イギリスなどに日本の留学生が来ており、使節団に面会に多く来ていることを知る。

フランスはナポレオンによって自作農がつくりだされ、それが勤労意欲を高め、生産性を上げ、自立的なブルジョア「プチブル」をフランス全土に生み出し、それが発展の基礎となる。そして手工業品のデザインを重視して品質で勝負しているのを知る。

西洋文明が栄えたのは、過去の知識を集積し、磨きをかけてきたから文明の光を生じたのだと認識する。その知識を空しくしては駄目と、博物館、図書館を観て思う。

小国の知恵も知る。ベルギー(人民が武を嗜む)、オランダ(忍耐力があるとして、餌のようなものを食べているとフランス人に揶揄されても航海国、商業国となる。生活は堅実)、デンマーク(質朴)、スイス(工業技術と武力)でも見るべきところはきちんと見ている。

ドイツではビスマルクから欧米諸国の弱肉強食の体質を教えてもらう。万国公法ではなく武力が肝要、アメリカは広大な大陸を独り占め、イギリスは世界に先駆けて産業革命。フランスは豊かな台地。国権自主を重んずるドイツは淳朴の風があると感想を書いている。ロシアは未開の大国で、貧しさと陰鬱な暗さを見て、貧富の差がひどいことを知る。イタリアが西洋文明の元であることを知り、ウィーンでは万博を観る。

帰りにアジアを見て「弱の肉は強の食、欧州人遠航の業起こりしより、熱帯の弱国、みなその争い喰うところとなりて、その豊穣の物産を、本州に輸入す」と書き、スペイン、ポルトガルの威圧的な直接統治に対して、英国の老獪な間接統治にも感想を述べている。

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