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zoom RSS 「復元七支刀」鈴木勉 河内國平 編著

<<   作成日時 : 2017/07/09 22:01   >>

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友人からいただいた書である。刀に関係があるから私にいただいたのだが、彼は古代史に興味があって購入したとのことだ。雄山閣創立90周年記念企画出版とあって定価が5600円もする本である。
内容は七支刀の復元に努めた編著者たちの記録である。七支刀は従来は鍛造で造られたとされていたそうで、河内刀匠も一度鍛造での復元作業に携わったことがあったそうである。河内氏は、その時にこれは鍛造ではなく、鋳造ではないかと思われたそうである。

鈴木氏は工芸文化研究所理事長で、他に金属工学の佐藤健二氏、河内刀匠、鋳金家の濱田善玲氏、彫金家の松林正徳氏、伝統工芸金工作家の奥村公規氏などが参加している。NHKもこの復元の過程を撮ることで関与したようだ。七支刀は石上神宮の御神宝であり、神社の協力もかかせない。

七支刀は本当に4世紀のもので貴重な金石資料なのか。あるいは7、8世紀のものなのかなどを復元作業を通して明らかにすることを狙いとしている。志賀島の金印と同様に価値があるものなのかを、古代の東アジア史の中で、見つめ直そうということだ。

一つの視点は4世紀にこのようなものが百済でできたのかということ。(朝鮮半島にはこれと同様なものの金石資料は存在していない)
この形状は東アジアにないし、世界でもない。だから5世紀半ばまで下げる意見もある。また、今までの研究は銘文だけが脚光を浴びていたという面がある。

昔は金石に彫られているから歴史史料として信頼できるだったが、その銘が原銘なのか、追銘なのか、あるいは偽銘なのかも問題にすることが必要である。特に陰刻文字はそれらの危険性がある。
また日本書紀の神功紀に七枝刀の記述があるが、どちらかがねつ造の可能性もあるわけだ。

これまでは、銘文の百練から鍛造と考えられていた。また固くなる鋳造では銘文が彫れないという面がある。だが鋳造を脱炭する技術も考えられないことはなく、今回の復元作業になったわけだ。

その鋳造で作り上げる過程も詳しくかかれている。河内刀匠の仕事は鋳造でできたものを熱して、脱炭する作業である。顔に水ぶくれができるほどの作業だったようだ。

同時に、当時の中国の鉄技術の研究、象嵌技法も研究する必要があり、なされている。
象嵌された文字の形も当時の文字として矛盾はないかも分析している。碑文や墓誌銘、法帖などから比較しているが、色々なもの(資料)の写真と一字一字の比較が掲載されていて興味深い。

その結果、文字は三國時代から魏晋時代、五胡十六國時代、南北朝時代のものと判明する。魏、呉の影響下にあり、下って4世紀では北魏や前秦の碑との関連、東晋の行草の影響などもあり、4世紀から5世紀にかかるころと判断される。すなわち、当初は8世紀まで考えていたが、それは違うことがわかったわけだ。また表と裏の文字も同じ手のものと判定した。
そして文字にみられる地域色は中国中原との隔たりも考える必要がある。

白鋳鉄での復元作業は、2度ほど実験に失敗し、費用の点からも厳しい状況になったが完成した。

その結果、東晋の泰和四年(369年)に百済で製作し、倭との通交関係を結ぶために、贈ったもの。百済にとって七支刀の銘は、外交文書であり、倭人の気持ちを損なうことなく、自国を侮られないように留意して作った文章といえる。
すなわち、百済が自国の国力を倭人に示し、倭を牽制するために七支刀を贈った。鉄すなわち鋳鉄とはがねを供給する約束のしるしとして贈った。百済の滅亡まで供鉄限冶的な政策を続けた。

古代の鉄は、鉄と言っても、なまがね(低炭素鋼)、はがね(高炭素鋼)、ずく(鋳鉄)があり、 鉄製農機や工具をつくる人にとって大切なのははがねであることは認識しておく必要がある。
なお、はがねを手に入れるためには、@はがねを得るような製鉄をする。Aずくを製鉄し(ずく押し)、脱炭などで炭素量を調整する、Bなまがねを炉で加炭して高炭素鋼とする。(近代では卸し鉄という技術)Cはがねを流通経路を通じて獲得するの方法があると書かれている。

復元に携わった研究者がそれぞれに専門的な立場からの論考を書いており、読み難い本であった。なお河内刀匠は日本刀製作の技量も素晴らしいが、このような研究にも携わっており、偉いと思う。

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現代の鋳造というのは、一般に普及しているのは、ダイ・キャストによる鋳込みを指しています。金型(ダイ)に機械加工や放電加工によって形状を彫り込み、そこに溶湯(アルミ合金、真鍮合金、亜鉛合金を高熱で溶かしたもの)を、油圧シリンダーによって極めて短時間に鋳込み(キャスティング)ます。難は、得られた製品の中に巣(空気の穴)が残ること。これは腐食や経年変化の悪要因になります。
七支刀が4〜5世紀のものならば、今風の鋳造ではなく、蝋で刀の姿を形作って、それを粘土で包み、湯口やオーバーフロー(不純物抜き)を設定し、溶かした鉄を流し込む方法。単に重力で上から下に溶湯を注ぐやり方。
当時の銭の作り方とほぼ同じ。ただ銭の場合はタネ銭(湯口と枝銭)を粘土で挟んで作った鋳型があり、そのため鋳巣が発生し、錆びたり経年劣化しますが、もし七支刀が蝋でつくられて居れば溶湯はその蝋を溶かしつつ鋳型の中へ侵入しますから、空気をうまく押しだして、比較的に密な組織が得られます。金銅製の持仏などもこの手法。
そこから鍛造工程に移行できるか、分かりませんが?
まあちゃん
2017/07/14 20:01

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