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zoom RSS 菊地久治郎評論

<<   作成日時 : 2016/12/11 22:15   >>

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菊地久治郎とは、私が高校時代に習った国語教師のペンネームである。非常に変わった先生で、当時の高校生に強い印象をあたえ、50年たっても、高校の同期生における先生の思い出は鮮烈である。特に、先生が時に行われた読書会は、レコードプレヤーを持参して、バックミュージックをかけながらの朗読である。谷崎の「刺青」、三島の「潮騒」や「トニオクレーゲル」など、同期の胸にはそれぞれに強い印象を刻まれている。

その先生が、実は江戸の異端文学(無頼、任侠、白浪物、四谷怪談、流血などがキーワード)研究の研究者として、10編以上、雑誌や本として発表されているのを最近に知る。
先生の思い出、業績を本にしようかと、高校同期の何人かと企画している。その一員として、最近は先生の評論を読んでいる。

変わった先生だけあって、文章も難解で読み難い。学識が深いものだから、西洋の著述家、思想家などの例を比喩や例証として出されるのだが、こっちは浅薄卑小な知識しかなく、苦労する。そして旧仮名遣い、それに旧字(正字)を使った難解な字句が出てきて苦労している。
ワイルド、ヴァリンガー、ニーチェ、T・E・ヒューム、ジイド、フロイド、ブウルジョ、ムリリョ、ホセ・チュリゲラ、ベルグソンと出てくるが、一冊も読んだことがないからお手上げである。

ただ、「西郷隆盛詩論」などは、西郷隆盛の生き方を叙述してわかりやすい文章である。「大きく叩けば大きく応え、小さく叩けば小さく応え」と評された西郷の人物像に迫っており、「先生、なかなか」と言う感じである。

また浮世絵の血みどろ絵(無惨絵)についても評論しており、なかなか面白い。「血みどろ絵の原理」、「北斎・絵金・芳年 血みどろ絵の因果」の評論があるが、後者の論を紹介する。

春画における男役に論評し、春信は中性化された優男、歌麿の男は醜男、むさい下郎。そして北斎はタコに男の代わりをさせていると書き、なるほどである。
また春信、歌麿、英泉はフェミニストとして、歌麿の「婦人人相十品」などが美人画の傑作、それに対して国芳の「正札附現金男」は男絵の佳品としている。
男絵の方では、北斎が刺青のエロチシズムを発見し、それが国芳などに伝わる。そして、去勢されざる男がその性を露わに女とからみあう絵柄の円熟は、浮世絵の最期を飾る血みどろ絵に見出されると書く。

そして、血みどろ絵は芝居の様式美と関わるとする。白浪物が江戸の演劇の団円であるように、江戸版画の爛熟と終焉のさまを血みどろ絵は象徴すると論ずる。
特に、血が色彩を得て、前面に拡大されたのは絵金の芝居絵である。男の自害図は芳年も描くが、絵金の絵には野卑にして豪華な男のナルシズムが喘いでいると書く。

明治になって文明開花となると、もはや江戸末期の闇の凝視は許されない。芝居小屋のいざり火にほのかにゆれる舞台美とともに浮世絵は死を迎えると先生らしく文学的に結ばれる。

文学の評論では、「わが国における無頼の思想3「近世の文学−特に演劇における無頼性の形成−」」を紹介すると、演劇、浄瑠璃を絡めて解説しているのが面白い。

もともとは「かぶき者の模倣」にはじまるのが歌舞伎。ここで風紀の問題で女が演じることが禁止され、男が女方として女を演じる。ここにおいて、女方は女の仕草を悪所(吉原など)から学ぶ。

男はもともとが、かぶき者の模倣からだから、当然に任侠的な男が中心となる。そして男が満身の力をこめて足を踏まえ身をかしげるときに男らしさの力感がそこに生じ、女性がたおやかに身をのけぞらすときに、そこに一瞬のあでやかさが張り詰めると書く。

能楽が冷かな仮面と抑制した静寂によって、死への親近をつぶやいた芸術に対して、歌舞伎はいっさいの旧套を脱してエロスへの讃歌を奏でる生の芸術と書く。
また近松門左衛門の浄瑠璃は、人形劇としえ歌舞伎に学び、”憂”の心理で、人間に同情を求め、その憐憫の真率さで歌舞伎に張り合う。ここでは女性は限りなく美化される。

歌舞伎は浄瑠璃に対抗して色と芸をさらに磨いていき、浄瑠璃は心中物で奇矯な暗黒に進む。そしてお互いが影響しあって、幕末の歌舞伎の色濃い悪の舞台の情調が生まれる。それが四谷怪談であり、白浪狂言と書く。

先生の難解な文章と、先生の屈曲した性格から書かれた評論を簡単に紹介するのは難しいが、何となく私は惹かれる。

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